顎関節症とは
顎関節症は、顎の関節の病気です。最近、以下のような症状はありませんか?
- 口を大きく開けると痛みがある
- 口を大きく開けると音が鳴る
- 肩がこる
- 頭痛がする
- 目の奥が痛む
- 耳の奥が痛む
これらの症状が気になりだしたら、顎関節症という顎の関節の病気が疑われます。
症状がひどくなってくると、口が開かなくなったり、めまいがしたり、耳鳴りがしたり、睡眠障害を起こしたり、自律神経が低下したりする場合があります。
顎関節症は、噛み合わせと筋肉と顎の関節のバランスが崩れることによって起こります。
噛み合わせの治療を行うことで、症状を少しずつ楽になっていきます。
気になられる方は、早めに歯科医院を受診することをお勧めします。
当院の治療について
歯周病治療に専念し始めたのは1989年ごろになります。当時は顎関節症の学問・治療は非常に難しく、率先して治療を行う先生は少ない時代でした。
しかしながら顎関節症で「口が開かない」「顎が痛くて食べ物が噛めない」などの症状で苦しんでいる患者様がいらっしゃり、どうにかしてあげないといけないという強い気持ちから顎関節症に関わって行きました。それからは臨床・研究・教育などを通して顎関節症について知見を深めてきました。
顎関節症は診断が非常に難しい病気です。患者様の訴えと本当の原因が違う場合もあります。
当院では院長の豊富な経験と最新の検査設備を用いて、正確な検査・診断ができると自負しています。
治療の流れ
患者様それぞれの症状によって最適な方法を計画しますが、主には以下の流れになります。
症状の軽い場合 【対症療法(保険適応)】
- 問診
- レントゲン
- 噛み合わせの模型
- 痛みをとるためのマイオモニター(低周波)治療
- スプリント治療(保険適応のマウスピース)
症状の重い場合 【噛み合わせを作り直す治療(自費治療)】
- 問診
- レントゲン、CT、MRI
- 噛み合わせの模型
- コンピューターによる顎・筋肉のデータ採りと診断
- オルソーシス治療(自費のマウスピース)
- 矯正か被せものによる噛み合わせを作り直す治療
対症療法は原因を治す治療ではありませんので、症状が再発することがあります。
また、症状が重い場合は正しい噛み合わせに作り直す治療が必要になりますが、治療には時間がかかりますので、顎関節症はとにかく根気強く治していかなければなりません。
顎関節症と頭痛
顎関節症の症状である頭痛に焦点をあてます。頭痛は誰でも一度は経験したことのある一般的な病気です。重大な病気の徴候の場合もありますが、そのほとんどは”いつもの頭痛”ということで片付けられていると思います。
頭痛には血管系に由来する血管性頭痛と筋肉に由来する緊張性頭痛がそのほとんどで、頭痛の8割以上がこの2つです。(うち7割は緊張性頭痛) 今回はかみ合わせと大きく関係のある緊張性頭痛についてお話します。
緊張性頭痛の発生メカニズム
緊張性頭痛は、頭蓋や頚部に分布する筋肉が常に緊張していることによって起こる筋肉の痛みです。筋肉が緊張していると、筋肉は血行不足になり、酸素不足になります。その状態が長く続くと、筋肉内に乳酸(発痛物質で肩こりなどを起こす)が貯まり、痛みとして感じます。
腕や脚の筋肉に乳酸が貯まった場合は筋肉痛(いわゆるこり)で、頭蓋周囲の筋肉の場合は頭痛となります。 筋肉の痛みは、その筋肉が付いている場所よりも遠く離れた場所で痛みを感じることがあります(放散痛)。例えば、肩の筋肉の放散痛は後頭部の頭痛として感じられます。
なぜ、かみ合わせが悪いと頭痛が起こるのでしょうか?
顎や頚部、側頭部には、様々な顎を動かす筋肉がありますが、かみ合わせが悪いと、筋肉は常時無理な動きを強いられ、持続的に緊張状態になります。そうすると、先ほど述べたメカニズムにより頭痛が起こります。
かみ合わせが悪くなる大きな原因として、口呼吸があります。永久歯が萌出してくるころ、鼻アレルギー、アデノイドなどにより鼻で呼吸が出来ないと、呼吸を補うために口で呼吸をするようになります。
鼻で呼吸が出来る場合、口唇、頬筋、舌のバランスは問題なく、歯列は正しい位置に並びますが、口で呼吸をする場合は、舌は低い位置あるいは前方に位置し、嚥下(食物や水を飲む込む)に上下の歯の間に舌が介在し、舌の圧力で下の歯を圧迫し歯の萌出を妨げたり、歯の並びを内側に倒したりし、本来並ぶべき場所より低い位置に歯が並びます。
また、舌が低い位置にあると、上の歯の並びの幅は狭くなります。その結果、かみ合わせと筋肉のバランスが崩れてくるのです。(図1)
顎関節症から起こる頭痛の治療方法は?
まず、頭痛の原因が本当にかみ合わせなのかを診断する必要があります。頭痛には様々なものがあり、かみ合わせが悪いために起こるこの頭痛は、緊張性頭痛(頭痛の7割以上)で、その他の顎関節の症状も伴っている事がほとんどです。治療方法は、症状の軽度の場合、緊張した筋肉のコリをとるためにマイオモニター(図2)と呼ばれる低周波の機械をかけます。
マイオモニターは三叉神経と顔面神経を刺激して、その神経に支配されている顔面や顎の筋肉を動かし、血行を改善し、筋肉内の乳酸を取っていきます。軽度の場合、これである程度改善しますが、マイオモニターは対症療法であり、問題のかみ合わせを改善するわけではありません。日常生活に支障が無い程度の軽度の場合はこれ以上治療をする必要はありません。
対症療法のみでは症状が改善しない時や日常生活に支障をきたすほど重度の場合は、顎の動きや筋電図を調べる専門のコンピューター(図3)で筋肉や顎の状態を診断し、かみ合わせを修正する為のオルソーシス(図4)というマウスピースを作ります。これを24時間装着してもらい、半年から1年かけて、顎と筋肉とのバランスを正常な状態に戻します。
これによりほとんどの顎関節症の症状は改善されます。その後はオルソーシスで埋めていたスペースを、矯正や被せ物により埋め、かみ合わせの位置を改善していきます。
最後に
かみ合わせと筋肉のバランスが悪いために起こる頭痛あるいは顎関節症は、バランスが悪いと必ず出てくるわけではありません。実際、ほとんどの人が多少なりともこのバランスは崩れていますが、症状が出るのは一部の人あるいは一時的なものです。なぜなら人には順応能力というものがあるからです。
つまり症状を誘発するようなストレスが許容範囲(順応力)を超えた場合に発症することになります。 かみ合わせは、緊張性頭痛の原因の1つです。頭痛の症状がひどい方やその他の顎関節症の症状がある方は、一度御相談ください。
鼻気道閉塞が顎関節に及ぼす影響
顎関節症の多くはかみ合わせと口の周りの筋肉と顎関節とのバランスが崩れることによっておこります。その大きな要因として鼻気道閉塞(鼻で息ができないこと)があります。
乳歯から永久歯へと歯牙の交換期では、歯列は頬筋、口唇、舌に大きな影響を受けます。鼻気道に問題なく鼻で呼吸が出来る場合は、口唇、頬筋、舌のバランスはよく、歯列は正しい位置に並びます。しかし、鼻アレルギーやアデノイドなどにより鼻気道の閉塞、狭窄が起こると、鼻で呼吸が出来ないことを補うために口で呼吸をするよう(口呼吸)になります。
1鼻アレルギーの特徴的な口の中の状態
- 口呼吸によるメラニン色素の沈着
- 正常な位置に舌がない為高い口蓋となる
2鼻アレルギーの特徴的な口の中の状態
- 舌の突出による開口
- 口呼吸による口蓋扁桃の肥大
舌は本来口蓋に張り付くような位置にありますが口呼吸をすることで舌は本来あるべき位置よりも低いあるいは前方に位置し、嚥下(食物や水を飲み込む)の時に上下の歯の間に舌が介在しやすくなります。
その時、舌の圧力で下の歯を圧迫し、歯の萌出を妨げたり歯の並びを内側に倒したりするため、本来並ぶべき場所より低い位置に歯が並びます。
また、舌が低い位置にあると、上顎の歯列は舌の圧力を受けなくなり頬側からの力を大きく受けるので、側方に成長できず幅が狭くなります。その他の口腔内の特徴として口呼吸によるメラニン色素の沈着、舌の突出による開口、高い口蓋、扁桃腺肥大など色々な特徴がみられます。
その上アレルギーなどの原因で舌の位置が異常をきたすようになると、下顎の位置は後退し、咽頭部での気道の狭窄が起こり、睡眠障害が起こったり、いびきをかいたりするようになります。
気道の狭窄
このように、鼻気道閉塞による影響でかみ合わせと筋肉のバランスは崩れ、時間をかけて筋肉と顎関節に影響が出てくるのです。鼻気道閉塞の原因はいろいろあります。
鼻気道閉塞の原因
- 鼻アレルギーによる鼻甲介粘膜の肥大
- 鼻中隔湾曲
- 鼻中隔結節肥大
- 鼻中隔櫛、鼻中隔棘
- アデノイド