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小児マウスピース矯正のトラブル解説|後悔しないために親が知るべきこと

「子どもの歯並び、マウスピース矯正が良いと聞いたけど、高額だし失敗したらどうしよう…」
大切なお子様のことだからこそ、治療への期待と同じくらい、不安も大きいのではないでしょうか。

この記事では、そんな不安を抱える保護者の方に向けて、小児マウスピース矯正で実際に起こりうるトラブルとその原因を徹底解説します。さらに、後悔しないための歯科医院選びのポイントまで、専門知識がない方にも分かりやすくお伝えします。

この記事を読めば、漠然とした不安が解消され、お子様にとって最善の選択をするための具体的な判断基準が明確になるはずです。

小児マウスピース矯正のトラブルは“なぜ”起こる?主な5つの原因

小児マウスピース矯正

小児マウスピース矯正で起こるトラブルは、決して珍しいものではありません。
しかし、その多くは原因を正しく理解し、事前に対策することで防ぐことが可能です。

まず結論として、トラブルの根本には主に以下の5つの原因が潜んでいます。

原因カテゴリ 具体的な内容

協力体制の問題

装着時間が守れない、装置の管理ができない

診断・計画の問題

顎の成長予測の誤り、不適切な治療計画

根本原因の見逃し

口呼吸や舌の癖など、歯並びを悪くする習慣への未対応

物理的な問題

装置の破損・紛失、サイズが合わないことによる痛み

衛生管理の問題

セルフケア不足による虫歯や歯肉炎

これらの原因を知ることで、主体的に回避するための道筋が見えてきます。

原因1:装着時間不足など、親子の協力が得られない

マウスピース矯正は、毎日一定時間、装置をお口の中に入れておくことで初めて効果を発揮します。特に小児矯正では、お子様本人の協力と、保護者の方のサポートが不可欠です。
しかし、実際には推奨される装着時間を守れず、計画通りに治療が進まないケースが最も多いトラブルの原因となっています。

項目 推奨される状態 トラブルに繋がる状態

1日の装着時間

17時間〜20時間以上(装置による)

装着を嫌がり、すぐに外してしまう

睡眠中の装着

朝までしっかり装着できている

寝ている間に無意識に外してしまう

日中の装着

食事と歯磨き以外は装着している

学校でつけ忘れたり、友達にからかわれるのが嫌で外したりする

装置の管理

保護者が装着時間や洗浄を管理・記録する

親子ともに管理が曖昧になり、装着時間が不足する

お子様が装着を嫌がるのには、「違和感がある」「話しにくい」といった理由があります。
そのため、なぜ治療が必要なのかを根気強く伝え、親子で目標を共有することが成功への第一歩となるのです。

原因2:成長予測の誤りなど、診断・治療計画のミス

大人の矯正と異なり、子どもの矯正は顎の成長を考慮しながら進める必要があります。
顎の骨がどのように成長していくかを正確に予測し、それに基づいた治療計画を立てることが極めて重要です。
この最初の「見立て」が不正確だと、どんなに真面目に装置を使っても、望む結果は得られません。

検査・診断のレベル 特徴 起こりうるトラブル

不十分な検査

・通常のレントゲン(2D)のみ
・口腔内の視診や歯型採取のみ

・顎の成長方向を読み違え、歯が予想外の方向に動く
・歯根の状態を把握できず、歯にダメージを与えるリスク

精密な検査

・CT撮影(3D)による骨格の立体的な分析
・顎の動きや筋肉のバランスを調べる検査

・正確な成長予測に基づき、無理のない治療計画を立案できる
・将来的なリスクを回避し、治療の成功率が高まる

経験の浅い歯科医師や、精密検査のための設備が整っていない医院では、この成長予測が曖昧になりがちです。
それが、「計画通りに歯が動かない」というトラブルの大きな原因になります。

原因3:口呼吸や舌の癖など、歯並びの「根本原因」の見逃し

実は、お子様の歯並びが悪くなる背景には、単に歯の生え方の問題だけでなく、日常的な癖が大きく関わっています。
これらは「口腔習癖(こうくうしゅうへき)」と呼ばれ、歯並びを悪化させる根本的な原因です。

  • 口をぽかんと開けている(口呼吸)
  • 舌で前歯を押す、舌を突き出す癖
  • 指しゃぶり
  • 唇を噛む癖
  • 頬杖をつく

これらの癖を放置したまま歯だけを動かしても、舌や唇の筋肉が歯を元の悪い位置へと押し戻してしまいます。
これが、治療後の「後戻り」という最も残念なトラブルに繋がるのです。
したがって、歯を動かすと同時に、これらの癖をトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)によって改善していくアプローチが非常に重要になります。

原因4:装置の破損・紛失や、子どもの口に合っていない

マウスピース矯正は取り外しができる手軽さがメリットですが、それが裏目に出ることもあります。
食事の際に外してそのまま忘れてしまったり、遊んでいる最中に落として壊してしまったりするケースは少なくありません。
装置の作り直しには追加の費用や時間がかかり、治療計画に遅れが生じる原因となります。

トラブルの種類 主な原因 対処法

紛失

・外食時にティッシュに包んで置いておく
・学校で外したままにしてしまう

・必ず専用ケースで保管する習慣をつける
・外す場所を決めておく

破損

・着脱時に無理な力を加える
・ペットが噛んでしまう
・踏んでしまう

・正しい着脱方法を親子で練習する
・ペットの手の届かない場所に保管する

不適合による痛み

・顎の成長によってサイズが合わなくなる
・新しい装置への交換直後

・無理に装着せず、すぐに歯科医院に相談する
・痛みは数日で慣れることが多いが、続く場合は連絡する

また、お子様の顎は日々成長しているため、定期的にチェックを受けないと装置が合わなくなり、強い痛みや口内炎の原因になることもあります。

原因5:虫歯や歯周病のリスク管理不足

マウスピースを装着している間は、歯が装置で覆われているため、唾液による自然な洗浄作用(自浄作用)が働きにくくなります。唾液には、お口の中の細菌を洗い流したり、酸性に傾いた口内を中和したりする大切な役割があるのです。
そのため、普段以上に丁寧な口腔ケアをしないと、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。

ケアの項目 適切なケア 不適切なケア(リスク増)

食後の歯磨き

マウスピースを装着する前に必ず行う

歯磨きをせずに装着してしまう

装置の洗浄

専用の洗浄剤やブラシで毎日清潔にする

水でさっと流すだけで済ませてしまう

定期メンテナンス

歯科医院で定期的に歯のクリーニングを受ける

自己流のケアのみで、プロのチェックを受けない

「矯正治療中に虫歯ができてしまい、治療が中断した」というのも、よくあるトラブルの一つです。

トラブルを回避!後悔しないための小児矯正歯科選び4つの鉄則

小児矯正歯科選び

ここまでご紹介したトラブルや失敗談は、決して他人事ではありません。
では、どうすればこれらを回避し、親子で満足のいく治療を受けられるのでしょうか。

鉄則 チェックポイント なぜ重要か?

1. 精密検査

CTなど、顎の骨を3次元で撮影できる設備があるか

正確な成長予測と安全な治療計画の立案に不可欠

2. 根本原因への対応

MFT(口腔筋機能療法)など、悪習癖を改善するプログラムがあるか

後戻りを防ぎ、お子様の健やかな成長をサポートするため

4. 説明の丁寧さ

メリットだけでなく、リスクや他の治療法も正直に説明してくれるか

親子が納得して治療に臨み、医院との信頼関係を築くため

5. サポート体制

担当衛生士制度など、治療中の不安に寄り添う仕組みがあるか

長期間の治療を、親子でモチベーションを保ちながら乗り越えるため

これらの鉄則を一つずつ詳しく見ていきましょう。

鉄則1:精密検査(CT等)で顎の成長まで立体的に診断してくれるか

後悔しない治療の第一歩は、お口の中の状態を「正確に」把握することから始まります。従来のレントゲン写真(2次元)だけでは、顎の骨の厚みや歯の根っこの正確な位置関係まで把握するには限界があります。
しかし。歯科用CT(3次元)を使えば、顎の骨格を立体的に捉え、より安全で確実な治療計画を立てることが可能です。

検査機器 見える情報 メリット・デメリット

レントゲン
(2D)

平面的な歯と骨の状態

【メリット】基本的な検査
【デメリット】情報が平面的で、重なった部分が見えない

歯科用CT
(3D)

立体的な顎の骨格、歯根の向き、神経の位置など

【メリット】より正確で詳細な診断が可能
【デメリット】設置している医院が限られる

鉄則2:「なぜ歯並びが悪くなったか」根本原因へのアプローチを重視しているか

「そもそも、なぜこの子の歯並びは悪くなってしまったのか?」という根本原因を探り、そこから改善しようとします。
カウンセリング時に、お子様の普段の様子(口呼吸、舌の癖、指しゃぶりなど)について詳しく質問され、MFT(口腔筋機能療法)のようなトレーニングを提案してくれる医院は、長期的な視点で子どもの健康を考えてくれている証拠です。

熊本県熊本市南区にある「かどおか歯科医院」では、歯並びが悪くなった原因にアプローチする「オルト矯正」という矯正方法を取り入れています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

小児予防矯正とは?歯並び改善だけではない効果を徹底解説! | 角岡歯科医院

鉄則3:メリットだけでなく、リスクや複数の選択肢を正直に話してくれるか

カウンセリングでは、治療の良い面ばかりを強調するのではなく、親子が直面するかもしれない困難についても正直に話してくれる医院を選びましょう。

  • 治療に伴う痛みの可能性
  • 虫歯のリスク
  • お子様の協力が得られなかった場合、治療が計画通りに進まない可能性
  • マウスピース矯正以外の治療法(ワイヤー矯正など)との比較

これらの情報を包み隠さず提供し、保護者の方がすべてを納得した上で治療方針を決定できるような姿勢こそ、真に患者に寄り添う医療機関の証です。

鉄則4:親子で無理なく続けられるサポート体制があるか

1年以上にわたる長い治療期間を、親子だけで乗り切るのは簡単なことではありません。治療中の小さな疑問や不安を気軽に相談でき、時には励ましてくれる存在がいるかどうかは、治療を成功させる上で非常に重要です。
熊本県熊本市南区にある「かどおか歯科医院」では、ご希望の患者さまには、担当の歯科衛生士がつく場合もあります。毎回同じスタッフが対応してくれることで、お子様も安心して通院でき、保護者の方も継続的な視点でアドバイスをもらえるため、心強いパートナーとなってくれるでしょう。

これだけは知っておきたい!小児マウスピース矯正の費用・期間Q&A

小児マウスピース矯正

ここでは、多くの保護者の方が気になる費用や期間、そして特定の治療法に関する疑問について、Q&A形式で簡潔にお答えします。

Q1. 費用は総額でいくらくらいかかりますか?

小児矯正の費用は、使用する装置の種類や治療の難易度によって大きく異なります。
一般的には、検査料や毎月の調整料などを含めた「総額」で提示されることが多いですが、医院によって料金体系は様々です。
※上記はあくまで目安です。カウンセリングの際には、必ず治療完了までの総額と、追加費用が発生する可能性について確認しましょう。

Q2. 「インビザラインはダメ」と聞きますが、本当ですか?

「インビザラインは効果がない」「失敗した」といった情報を目にすることがあるかもしれません。しかし、これはインビザラインという装置そのものが悪いわけではないケースがほとんどです。失敗の原因は、本来インビザラインでは治療が難しい症例(適応外)に使用してしまう場合です。
どのような治療法にも向き不向きがあるため、お子様の歯並びにその治療法が本当に合っているのかを専門医に正しく診断してもらうことが大切です。

【まとめ】トラブルを正しく知り、お子様の未来のための最善の選択を

小児マウスピース矯正は、お子様の歯並びだけでなく、健やかな成長をサポートする素晴らしい治療法です。しかし、その裏にはこの記事で解説したような、様々なトラブルや失敗のリスクが潜んでいることも事実です。

重要なのは、トラブルを過度に恐れるのではなく、その原因を正しく理解し、回避するための知識を持つことです。ぜひ、この記事でご紹介した「歯科医院選びの4つの鉄則」を参考に、いくつかの医院でカウンセリングを受けてみてくださいね。